巻頭言:主任司祭 豊島 治「やりとげます」

やりとげます

主任司祭 豊島 治

  4月14日、熊本で大きな地震がありました。最大震度7(益城町)があった二日後に同規模の地震が発生し、被災地では復興への気力が挫かれる状態が一時ありました。
 私は2009年にカリタスジャパンの教区担当に任命されました。カリタス・インターナショナルに属し、バチカンに本部があり165カ国が加盟しているものです。引き受けた当初は特に責務の大きさを意識することは正直ありませんでした。翌年2010年教皇様は「主の言葉」という勧告を発表し福音は宣言するだけでなく行動も伴うという旨のよびかけがなされました。

2011年の東日本大震災をはじめネパール、ミャンマー、熊本などそれぞれの被災地から「助けてほしい」という被害発生緊急メッセージが入るたびに、カリタス・インターナショナルからよびかけられ、世界中の教会が窮状をうけとめ祈り、物心両面の支えを各地の教会に要請するのです。近年その回数は増えています。

 東日本大震災のときからカリタスジャパンは、義援金の受付だけでなくボランティアの派遣・現場ニードの把握、ときには運営をするようになりました。
 同時期に「啓発部会」も改組設立され、命の大切さを啓発するなかで「自死」への取り組みをはじめました。教皇様のよびかけも力強い助けになっています。
 日本のカトリック教会は伝来当初から苦しむ人とともに歩み、教えられてきました。その600年の蓄積は阪神淡路大震災のときも、そしてその後につづく国内被災地援助のときも助けになったと考えます。

 5月9日、熊本震災のため熊本県菊池教会にボランティアベースがたちあがり活動がはじまりました。瓦礫撤去から心のケアの活動まで幅広く活動していると聞きました。東日本大震災被災地の各ベースも新たな展開を考えて進んでいくでしょう。現場主義を貫く貴重な組織です。

 カトリック教会は司教の呼びかけのもと一致して働きます。司教協議会傘下にあるカリタスジャパンから緊急募金のよびかけがありましたら原則2回の主日をつかって受付・送金をいたします。それ以降は個人で振込となります。

連載コラム:「来週も頑張ろう!」

「荒野のオアシス教会を目指して」

一瞬の勇気で、一生の家族!
連載コラム「スローガンの実現に向かって」第65回
来週も頑張ろう!

南大沢・堀の内地区 山本 保子

 日曜日のミサ後に集まるカフェ・オアシスのメンバーは、実家に帰って来た姉妹のようだ。超しっかり者のお姉さんを柱に、ちょっと頼りないところがある妹たち。もちろん、私もその中の一人。この頃は甥っ子や姪っ子(若いメンバー)も加わり、総勢23人の大家族となった。
 一週間のうちにあったこと(失敗談が圧倒的に多い)を披露し合ってみんなで笑い、少し疲れている妹をさりげなく気遣い、遅刻常習犯やおサボり気味の妹に突っ込みを入れ・・・。コーヒーサービスをしながら、自分たちも楽しんでいる。だから、カフェ・オアシスが活動しているテーブルは常に賑やかだ。・・・うるさい、とも言える(・・・反省・・・)。

 また、この姉妹、食べることが大好きだ。お姉さんが作ってくれるおいしいお料理・折々の打ち上げに行われるバーベキューを囲むひとときをみんなが楽しみにしている。このおいしいご褒美は、コーヒーサービスを笑顔で行う元気の源にもなっている。 だがしかし、この姉妹、ただ楽しんでいるだけではない。団結した時の底力はちょっとすごい。それが特に表れるのは軽食当番の時。カフェ・オアシスが発足した翌年の2011年から5年間、第5週目の日曜日と8月の軽食を担当してきた。
 前日から準備を始め、当日の後片付けまでみんなが助け合い、日頃の主婦力を120%発揮して8月を過ごす。もちろん、この時のお台所でも笑い声が絶えることはない。 そんな笑い声と頑張りの中から生まれたのが、多摩教会に集う皆さんにご好評をいただいているタコ ライスや夏野菜カレーたち。「おいしかった」とあたたかなお声をかけてくださる皆さんから、私たち姉妹は大きな大きな力をいただき、「来週も頑張ろう!」と思う。
 このように仲良く賑やかに活動する姉妹に新たなミッションができた。コーヒーと紅茶が苦手でいらっしゃる豊島神父様にお出しする飲み物を何にするか?! 緑茶・手作りの柚子茶や梅シロップ・・・。ご様子を伺いながら1つずつ・・・神父様お気に入りの一品を見つけていく予定。 グリーンのエプロンを着けて「笑顔でコーヒーを提供する」という発足時からの精神を守りながら、カフェ・オアシスの様々な活動はこのスタイルでこれからも続く。
 主観に満ちた「カフェ・オアシス雑記」となってしまいました・・・。

 5年前の8月に初めて訪れた多摩教会でいただいた軽食は、カフェ・オアシス作の彩り豊かなお素麺でした。教会でお昼ごはんをいただくことにも驚きましたが、そのおいしさにも驚かされました。受洗と同時にメンバーに加えていただき、私の「多摩教会での居場所」ができました。受洗間もない信者にとって、教会に自分の居場所があることがどれ程心強かったことでしょう。仲間と軽食をいただきながら語り合えることで、どれ程励まされたことでしょう。「来週も教会に来よう」と思うきっかけの一つになりました。
 私にぴったりの居場所と、かけがえのない教会家族を授けてくださった神様に感謝。神様、私が与えていただいたように、私も多摩教会を訪れる方々にコーヒーや軽食を通して安らぎや励ましをお伝えできますよう、どうぞお導きください。 カフェ・オアシスが皆さんの心癒す「オアシス」となりますように。

5月:「初金家族の会」からのお知らせ(次回は6/3・金)

「初金家族の会」からのお知らせ

 5月は聖母月、薫風に乗せて鶯の囀りが届く6日の初金ミサで豊島神父様は、この日のヨハネによる福音の『出産の苦痛もわが子の誕生によって心からの喜びに変わる』というたとえから「この世の苦難の時にも変わらず神様のハートが人間を慈しんでくださっているのです」と諭されました。

 ミサ後の初金家族の会は初参加の男性二人を交えて30数人が豊島神父様を囲んでの茶話会でした。遺書まで書いて命がけの高齢出産だった母上様に育てられた一人っ子の豊島神父様が、中学2年生のときに早くも聖職者への道をこころざし、何が何でも神父になりたかったことや、日本カトリック映画賞受賞作品「あん」に登場する福祉関連の施設とのかかわり、特に、辛い思いをしながら一生を施設で過ごす運命にあった病者を励ましながらの貴重な宣教体験など、心に響くお話の数々が相次いだ60分間でした。

 次回6月3日(金)にはイコン制作教室などでご活躍のフランスから一時帰国中のエルサレム修道会、シスター内海郁子さんを囲んでの茶話会を予定しています。
 次々と新しい話題のやりとりで信仰家族の絆を深める楽しい初金家族の会にどなた様もどうぞお気軽にご参加下さい。

巻頭言:主任司祭 豊島 治「第二ステージへ」

第二ステージへ

主任司祭 豊島 治

 「あなたは私の愛する子、私の心にかなうもの」
 イエスがヨルダン川で洗礼を受けた瞬間、天からの声がきこえたとあります。
 いのちの源である父から、完全に愛されていると体感した宣言を、いまの私たちもよびかけられています。

  I love you. You are OK. この宣言を受け、洗礼をうけた私たちは、完全な自己肯定をうけました。あなたは幸せになっていい。という神による永遠の愛と絶対的な受け入れの宣言です。

 もちろん、日常生活の問題や、困難さがなくなるわけではないのですが、命をもつものに与えられる一日一日の現場を果たしていくことでこの神様の宣言を証ししていくことになります。

 この世にあって、目に見えない神の愛、恵み、慈しみ、ゆるしを私たちは世において目に見えるしるしとなる。

 秘跡を大切にしましょう。隣人愛を意識しましょう。ここからの恵みによって私たちは十字架を担って、奪い去られることがない最終的な幸せを目指して次なる歩みを持てればと思います。

連載コラム:「耳を傾ける」

「荒野のオアシス教会を目指して」

一瞬の勇気で、一生の家族!
連載コラム「スローガンの実現に向かって」第64回
耳を傾ける

南大沢 加藤 泰彦

 復活祭が終わり、そろそろひと月が過ぎようとしているこの時期は、毎年のごとくちょっと忙しくなってきます。復活徹夜祭で洗礼を受けられた方々の記念文集の編集が始まるからです。2010年から作り始め、今年で7冊目になります。『受洗者記念文集』作製は多摩教会広報部の大切な仕事です。
 入門係の文集担当者から毎日のようにメールで新しい原稿が送られてきます。さまざまな年齢、境遇の方々の、洗礼にいたるドラマが書き込まれた原稿が届きます。長文もあれば短くまとめられたもの、散文もあれば、論文風のものも。書き手の個性を反映させた色とりどりの原稿が集まってきます。
 光栄なことに、この沢山の原稿の第一番目の読者の役割をさせていただいています。第一行目を読み始めたときハッとさせられる原稿に出会うこともしばしばです。それもそのはずで、人生の一大転換点を通り抜けられた方々の証言は読み手をグッと立ち止まらせる迫力があります。文章を丹念にたどってゆくと、行間に深い絶望や挫折、恐れが見かくれすることもあります。また、その苦しみを乗り越えた喜び、賛美も語られます。
 これらはまぎれも無い、生きた証言です。わたしたちはそれに素直に耳を傾けたいと思います。
 復活節第6主日(今年は5月1日)は「世界広報の日」にあたります。この日のために教皇メッセージが出されますが、今年は「いつくしみの特別聖年」にもあたり、フランシスコ教皇は「耳を傾ける」ということを強調されます。

 「人間社会を、見知らぬ人々が競い合い、優位に立とうとする場としてではなく、互いに受け入れ合い、扉がいつも開かれている家や家庭として考えるよう私は皆さんにお勧めしたいと思います。そのためには、まず耳を傾けなければなりません。(中略)耳を傾けることは決して容易ではありません。多くの場合、耳をふさいでいるほうがずっと楽です。耳を傾けることは,注目すること、理解しようとすること、他の人の言葉を評価し,尊重し,大切にしようとすることを意味します。(中略)耳を傾けるすべを知ることは,計り知れない恵みです。それはわたしたちが願い求め、実践すべきたまものなのです。」

(第50回「世界広報の日」メッセージより)

 文集の中にさまざまに語られるそれぞれの人生に、そっと耳を傾けましょう。闇から光りへ、新たな命への誕生の声を聞きましょう。新たに私達とともに歩む仲間となられた方々を喜んで受け入れましょう。
 時間をかけてゆっくり読んでいただければ幸いです。筆者の原文には極力手を入れないようにしておりますので、読みづらかったり、一言一言考えながら文章をたどる必要も出てきます。しかしその作業は「計り知れない恵み」なのです。オアシスを必死に探し求めて来られた方々の旅路の同伴者になりましょう。
 受洗者の皆さんからの原稿もあと少しですべて集まりそうで、このペースでいけば5月中にはなんとか完成の予定です。もうしばらくお待ちください。

特別寄稿:「釜石と福島に行ってきました」

特別寄稿
釜石と福島に行ってきました

司牧評議会委員長 塚本 清

 3月19日から21日に釜石と福島に行ってきました。
 これは、私の息子が高校生の時、東日本大震災のボランティアで釜石に行ってきた関係で、震災から5年経って、「釜石のこれまでと、これから」というイベントがあるので、来ませんかというお誘いを受け、一緒にでかけたものです。

 釜石に着いてまず、カリタス釜石に行きました。カトリック釜石教会の隣にあり、事務局長の今村さんに多摩教会の献金20万円をお渡ししました。震災直後は、教会に寝泊まりして活動を始めましたが、今では自分たちの建物もできていました。釜石の復興は進んでいますが、カリタス釜石では、様々な地域の仮設住宅から復興公営住宅へ移られた方々と、復興公営住宅が建設された地域の方々との交流に力を入れているとのことでした。
 「釜石のこれまでと、これから」では市内外の復興協働団体の発表があり、カリタス釜石からもこの5年間の活動報告がありました。釜石の町を歩いていると、いたるところに震災の後に来た津波の高さの表示がありました。町の中心部では2メートルくらいの高さまで津波が来たようでした。
 翌日は、福島に行きました。福島駅近くの野田町教会には、多摩教会から贈られたマリア像がありました。また野田町教会では、多摩教会のステンドグラスを作られたカルペンティール神父様の作られた十字架の道行のステンドグラスがありました。福島では町は普通のにぎわいでしたが、テレビの天気予報を見ていると、最後に県内各地の放射能の線量が報告されていました。

 今回行けたのは、釜石と福島だけでしたが東北では震災の後の復興がまだまだのところもあるようです。多摩教会でも、これからもカリタス釜石への支援を続けていかねばならないと思いました。

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①                 ②                ③                 ④

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(画像はクリックで拡大表示)

① カリタス釜石(左上の、十字架が立つ建物はカトリック釜石教会)
② カトリック野田町教会(外観)
③ 「多摩教会から贈られたマリア像」
④ カトリック野田町教会(聖堂)

4月:「初金家族の会」からのお知らせ(次回は5/6・金)

「初金家族の会」からのお知らせ

 教会脇、乞田(こった)川沿いの道が満開の桜で彩られた去る4月1日の初金ミサは、転任まぢかの晴佐久神父様と新任の豊島神父様の共同司式で捧げられました。
 当教会での最後の初金ミサ司式となった晴佐久神父様は、「初めて来られた方、いろいろと辛い思いをしている方も喜んで受け入れ、みんなで福音宣教に励んで神の国の宴を先取りしましょう」と熱心に呼びかけられました。

 ミサ後、信徒会館に数十人が集まり初金家族の会持ち寄り食材のお惣菜鍋を賞味しながら和やかに歓談のひとときを過ごしました。
 次回5月6日の初金家族の会は豊島神父様を囲んで懇談会を予定しています。

 初金家族の会は、初金ミサのあとお昼までの1時間、信徒会館で信仰共同体のお仲間同士、楽しくおしゃべりしながらお互いの絆を深める自由な集いです。
 『みんな違って、みんないい』 どなた様も、どうぞお気軽にご参加下さい。

巻頭言:主任司祭 晴佐久昌英「日本一の教会においでください」

日本一の教会においでください

主任司祭 晴佐久 昌英

 この巻頭言も、晴佐久神父としては最終回ということになりましたので、心置きなく、言いたいことを言わせていただきます。

 多摩教会は、日本一の教会です。まあ、「日本一」は言葉のあやにしても、少なくとも、「今の日本で、特別に聖霊の働きを感じられる教会」であることは、間違いありません。実際に多摩教会に出会って福音に触れ、多摩教会に歓待されて救われた人たちは、それを肌で感じているはずです。中でも、それぞれの闇の中から信仰の光へと導かれ、今年の復活祭に洗礼を受ける人たちは、その聖霊の働きの証し人です。
 その中には、幼いころキリスト教に出会ってから洗礼を求め続けて来たのに、どうしても救いを見出だせずに、長年にわたって苦しんできた人がいます。
 親に嫌われ、学校や職場ではいじめられ、家から一歩も出られずにいた人もいます。
 怪我と病気で苦しみ、激しい痛みのせいで生きる希望を失っていた人もいます。
 大学生の息子に突然先立たれて、絶望の淵をさまよっていた夫婦もいます。
 父親の介護と死をきっかけに、本物の宗教を求め始めた、全盲の男性もいます。
 何度も自殺未遂を繰り返しながら、自分の本当の居場所を求めて、様々なところをさまよい歩いてきた女性もいます。
 精神科の閉鎖病棟の中で多摩教会の信者と出会い、その信者を見舞いに来た神父に招かれて、教会に通いだした青年もいます。
 人生に行き詰って先が見えず、真っ暗な思いで教会を訪ねたのに冷たく対応されて傷つき、やっとの思いで暖かい教会を探し出して来た大学生もいます。
 最愛の夫を亡くしたことをきっかけにして、初めて真剣に自分の生き方を模索して訪ねてきた奥様もいます。
 つい最近、深刻なガンを宣告されて大きなショックを受け、一日も早く救われたいと願って、必死な思いで受洗を希望してこられたご婦人もいます。
 みんな、多摩教会で福音に出会って安心の涙を流し、教会家族に受け入れられてキリストと結ばれ、救いの喜びに目覚めて洗礼の秘跡を願い出た人たちです。
 今年が特別だということではありません。毎年、こうして闇から光へと、大勢の人が招き入れられてきました。今年の受洗者は37名です。晴佐久神父在任の7年間で、多摩教会創設以来の洗礼台帳ナンバーは、419番から721番まで、303人分増えました。

 すべては、聖霊の働きです。聖霊こそは、恐れと無知の闇の中にいる神の子たちをキリストのもとへ導いて、真理を教えてくれるのです。すなわち、この世界が生きるに値すること、この人生は決して無意味ではないこと、この命は死で終わるものではないこと、この私は天の父に、永遠に愛されていることを。
 確かに、世界は苦しみに満ちています。人生は無駄に過ぎていくように思われます。命はあまりに儚く、自分は誰からも見捨てられているように感じることさえあります。病気、障害、虐待、貧困、災害、不和、戦争。この世界を生きるということは、なんと過酷なことでしょう。確かに、この世界は苦難と苦悩に満ち満ちています。
 でも、ご安心ください。この世界には、多摩教会があります。福音を語る多摩教会のキリスト者がいます。福音を語る多摩教会のキリスト者たちという、日本一の教会家族があります。
 たとえ神父が代わっても、多摩教会に働く聖霊は決して変わりません。

 多摩教会の教会家族と共に働いた7年間は、我が司祭生活で、最も恵みに満ちた日々でした。教会家族のみなさんの愛情と忍耐のおかげです。感謝の言葉しかありません。みなさんは、本物の教会家族です。これからも、本当に多くの人を救うことでしょう。
 聖霊に導かれてこの文章を読んでいる、まだ福音を知らない方に、申し上げたい。
あなたは、神の子です。神に愛されています。あなたはもう、天の父の親心によって救われています。安心して信頼して、希望をもって、日本一の多摩教会においでください。