巻頭言:主任司祭 豊島 治「提出します」

提出します

主任司祭 豊島 治

 50日間の復活節が、聖霊降臨の祭日をもって終わりました。聖霊降臨は聖霊が与えられる日でもありますが、奇数年の今年は、司教座聖堂(カテドラル)での合同堅信式への参加の年でした。そこで、多摩教会復活徹夜祭での受洗者で準備ができた方や、幼児洗礼で規定の年齢に達した6名が堅信の秘跡を受けられました。このことで、今年度の入信の秘跡プログラムが結ばれたことになります。

 その合同堅信式には、東京・千葉の教会から170名ほどの受堅者が恵みを受けたのですが、その6月9日は、東京大司教が出された「宣教司牧方針の方向性」への答申締め切り日でもありました。多摩教会では、1月1日に発行した『2019年に向けて』(初日の出の光が多摩教会を照らしている表紙の冊子です)において、大司教さまからのお願いということで、この答申づくりを皆さんに投げかけました。多摩教会からは、四つのグループの参加をいただきました。事前に大司教さまからは、複数人で話し合うようにという要請もあり、個人で出された方には、教会家族委員会がその意を汲み取りながらまとめてくださり、五つの答申は、大聖堂内で大司教さまの面前にて本部事務局長に提出されました。
 多摩教会の他にも72の答申が提出されて、カトリック新聞には、2年後をめどに東京大司教からの宣教司牧方針となるとあります。この機会に少しずつ、多摩教会として出された内容について、少し解説も加えて報告します。

 ◎ なげかけその1 「 修道会の垣根を越えた、教区における司牧協力体制の充実 」
 「司牧協力体制」という言葉に具体性が見えなく返答に困ったようです。また、「修道会とは何か?」という質問もだされています。6月2日にはサレジオ会の北川大介神父さまが、その点について講話をしてくださっています。修道会の特性を、壁ではなくて多様性から来る力となるよう考えていければ、というような回答が多くありました。

 ◎ なげかけその2 「 滞日外国人司牧の方向性の明確化と見直し 」
 「滞日外国人と話していないからわからない」という回答もありました。「日本語でゆっくり話せば解決する」という意見も聞きましたが、多摩教会にもミサで共に祈っている仲間がいます。今やスマホで翻訳できる機能もついています。使ってみてはどうでしょうか。

 ◎ なげかけその3 「 継続信仰養成の整備と充実 」
 「日曜日の講座が必要」という意見が複数ありました。洗礼後の講座や、中高生向けの講座をという、強い要望もありました。通常の日曜日の入門講座でも配慮しています。また、誰でも聞くことができる拡大入門講座(専門的な分野で活躍している司祭&修道者が講師)や、特別入門講座(あるテーマに絞って解説する講話)を適時開催していますが、具体的な講座内容の提案もあり、ニーズは高いと感じました。司祭以外の講話も希望とありますが、講師の選定に難しいものがあります。継続信仰養成という題名ですから、次につなげなくてはなりません。多摩教会全体の雰囲気を加味して、スケジュールの組み立てをしなくてはならないからです。東京教区としては準備を進めているようです。

 紙面の都合で最初の三つしか挙げることができませんでした。また機会あれば、紹介できたらと思います。

 多摩教会では16日のシスター内海、30日猪熊神父様の講話以降は、しばらくゲストスピーカーがいないという通常のミサ、地区集会、講座、活動会となります。それは分かち合いを重ねながら、次へ向かう大事な期間ともいえます。教会の暦は、6月10日から年間に戻っています。王であるキリストの祭日に至る典礼歴の年間の季節は、主の復活と聖霊降臨によってこの世界の歴史の中に誕生した教会の、世の終わりまで続く「現在」を指し示しています。多摩教会という神さまの場で、時を過ごしていきましょう。それに、6月はイエスの聖心(みこころ)の月です。この月にわたしたちの心をイエスに向けるために、ミサや各自の時間で福音書をじっくり味わいましょう。福音書は、弟子達が知ることのできたイエスの心の中にある想いを伝えているのです。弟子たちが語り伝えずにはいられなかったイエスの心の想いを、私たちの心を開いて、受け止めなければなりません。

6月:「初金家族の会」からのお知らせ

「初金家族の会」からのお知らせ

島田 潤一

 6月の初金の日が梅雨入りの日となりました。この一カ月のあいだに、命に関わる暗い事件も起こりました。神父さまの話は、この川崎の事件も含め、命の大切さを考えさせるものでした。命と関連して重要なものに、心をむしばむ孤独と孤立があります。そこから逃れようともがく時、悪魔を呼び込むこともあるのです。そのようなときは、聖霊により、神様との関係に目覚め、祈るしかありません。御聖体を頂き、心を更新することを強調されました。

 「初金家族の会」を立ち上げた松原 睦さんが、突然帰天されましたので、故松原 睦さんを偲ぶ会としました。松原さんと共に初金家族の会を立ち上げた思い、当時の話を志賀晴児さんが、その後の教会ホームページを立ち上げた時の話を井上信一さんが話されました。松原さんのライフワークとも言える「香」の研究、追求についての話などがあり、松原さんの人柄が偲ばれました。
 最後に、奥様の松原文子さんに、ご主人を偲ぶ思い出をお話しいただきました。松原さんの信仰に対する思いを分かち合い、初金家族の絆を深め合えたのではと思います。

 次回、「初金家族の会」は、7月5日の初金ミサの後、11時頃から信徒会館で、中嶋誠さんに「故 松原睦さんと歩いたキリシタン史探求」とのテーマで、巡礼の中でキリシタン信仰の核心を追い求めた話をしていただきます。
 「初金家族の会」は、初金ミサの後、貴重な体験を披露し、分かち合い、信仰を語り合う、信仰家族の絆を深め合う楽しい会です。皆様、どうぞお気軽にお立ち寄りください。

6/2(日)拡大入門講座:北川大介神父(サレジオ会司祭)

20190602
一カ月遅れの、聖母月&召命祈願日の月企画、第三弾です。
今回は、6月2日(日)10時のミサ後、サレジオ会の修道司祭、北川大介神父さまに お話しいただきます。
演題は、「聖母マリア」&修道司祭への呼びかけ
北川神父さまは、サレジオ会で、修道者を志す中学生以降の養成に、長年携わってこられました。
修道士にとっての聖母マリアについてもお話しいただけると思います。
世界の教会の多様性の一片を知る機会にもなるでしょう。
修道者や司祭への召命をお考えの方も、いらしてみませんか?
どなたでも、ぜひご参加ください。

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💠 拡大入門講座 💠
講 話: 北川大介 神父(サレジオ会)
演 題: 「聖母マリア」&修道司祭への呼びかけ
日 時: 2019年6月2日(日)10時のミサ後(11時前ごろ)から
場 所: カトリック多摩教会Google Map 聖堂
    ( 東京都多摩市聖ヶ丘1-30-2 / TEL:042-374-8668 )
= 無 料*申込不要 =

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🔹 ご案内 🔹
多摩教会は、カトリック東京大司教区の大司教に属しています。修道会のひとつ「サレジオ会」は、大司教に従順を誓っており属していますが、加えて、サレジオ会独自の霊性と目的があります。
多摩教会は北方に「東京サレジオ学園」(小平市:養護施設と修道院)、南方に「サレジオ学院」(川崎市鷺沼:学校と教会と修道院)、東方に「サレジオ修道院・神学院」「チマッティ資料館」「カトリック調布教会」(調布市:修道院と神学院、資料館、教会)、西方に「サレジオ工業高等専門学校」(町田市/多摩境駅:高専と修道院)に囲まれています。また、多摩教会の平日ミサが行われている「かおり保育園」も、イエスのカリタス修道女会で、サレジオ会とつながって設立されています。
今回は、そのサレジオ会の司祭、北川神父さま(2010年司祭叙階)に、修道会の基礎を教えていただきます。北川神父さまは、修道者を志願する中学生からの養成に長年関わってこられました。
また、修道者であるには、聖母マリアの助けが特に大切です。マリアさまの行いを習いながら、世界の教会の多様性の一片を知る機会になりますように。

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6/30(日)特別講話:猪熊太郎神父(東京教区司祭)

20190630
多摩教会では、講座や講話の企画が続いています。
聖母月は5月、世界召命祈願の日は5月12日でしたが、6月16日(日)のシスター内海のお話に続き、一カ月遅れで、聖母月&召命祈願日の月企画が実現します。
今回は、6月30日(日)10時のミサ後、東京教区司祭の猪熊 太郎(いのくま たろう) 神父さまに お話しいただきます。
演題は、司祭となって25年&カトリック司祭への呼びかけ
猪熊神父さまは、今年、銀祝(司祭叙階25周年)。教区司祭として、さまざまな経験を重ねてこられました。
司祭への召命をお考えの方も、いらしてみませんか?
どなたでも、ぜひご参加ください。

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💠 特別講話 💠
講 話: 猪熊太郎 神父(東京教区司祭)
演 題: 司祭となって25年&カトリック司祭への呼びかけ
日 時: 2019年6月30日(日)10時のミサ後(11時前ごろ)から
場 所: カトリック多摩教会Google Map 聖堂
    ( 東京都多摩市聖ヶ丘1-30-2 / TEL:042-374-8668 )
= 無 料*申込不要 =

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🔹 猪熊太郎 神父 🔹
多摩教会信徒から、上智大学、東京カトリック神学院を経て、1994年司祭叙階。
高円寺教会、関口教会で助任司祭を務めた後、成田教会、青梅・あきる野教会の主任司祭を歴任。
韓国での研修を経て、現在、東京教区本部協力司祭として、徳田教会の主任司祭を補佐。
日韓司教交流会では通訳も務めている。
聖母マリアを模範とする教会に、教区司祭として奉仕してこられた25年を語っていただきます。

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入門講座(6月・7月)

= 入門講座からのお知らせ =

入門講座、2019年6月と7月の日程が決まりました。
いつからでも、無理なくご参加いただけます。
どなたでも、ぜひおいでください。

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2019年 入門講座(6月・7月)
日曜日のクラス:6月9日(日)~7月14日(日)
金曜日のクラス:6月7日(金)~7月19日(金)
*** 夏休み ***

🔹 以降は、決まり次第お知らせいたします 🔹

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  ☆ 講 師 : 豊島 治 神父 (カトリック多摩教会主任司祭)

  ☆ 費 用 : 無 料

  ☆ 聖書や教材は、教会で用意いたします

  ☆ 事前の申し込み不要

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入門講座クラス一覧
(全クラス随時ご参加いただけます。ご都合のよいクラスをお選びください)

金曜日:午後のクラス金曜日:夜のクラス日曜日:お昼のクラス
時 間13時30分〜14時15分
(その後、15時まで茶話会)
19時〜19時45分
(その後、20時30分まで茶話会)
11時15分〜12時
(その後、12時45分まで茶話会)
場 所信徒館1階信徒館1階聖堂エントランスホール

参考:「入門講座のご案内」をご覧ください

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カトリック多摩教会
東京都多摩市聖ヶ丘1-30-2Google Map 
お問い合わせ先(教会受付)042-374-8668

聖書講座(6月・7月)

聖書講座

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聖書講座は、通常、月の第二、第三、第四金曜日の、
午前10時〜10時45分です

2019年度、6月以降、夏休みまでの聖書講座は、
6月14日(金)、21日(金)、28日(金)、
7月12日(金)、19日(金)
です

どなたでも、いつからでも、大丈夫!

ぜひご参加ください

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  ☆ 講 師 : 豊島 治 神父 (カトリック多摩教会主任司祭)

  ☆ 費 用 : 無 料

  ☆ 聖書や教材は、教会で用意いたします

  ☆ 事前の申し込み不要

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カトリック多摩教会
東京都多摩市聖ヶ丘1-30-2Google Map 
お問い合わせ先(教会受付)042-374-8668

巻頭言:主任司祭 豊島 治「聞こえています」

聞こえています

主任司祭 豊島 治

 突然の真夏日の到来となりました。暑さ慣れしていないこの時期の気温30度超えは、体調にひびくといわれています。かといって、急激なクーラー内生活もまた負担になり得ますので、どう過ごすか難しいものです。

 先日、神学院で司祭を目指す神学生と、その同伴の司祭方に、講話をしてきました。院長さまから依頼があったとき思い出したのですが、私は2005年の司祭叙階でしたので、今年で15年となるわけで、神さまの計らいと原点復帰を促されたように感じました。

 司祭へと進む自分を意識したのは、中学2年生のときでした。通っていた教会に、「カッコイイ(?)」神父様たちが着任しました。おもしろくって、笑いがあって、でも落ち着きがあっての風格でした。4人の神父様が一つの教会でミサをされていたので、バランスがとれていたのかもしれません。
 一方、家庭状況ですが、父は昭和20年という戦争さなかでスパー神父様と出会い、洗礼を受けました。スパー神父様は、現在、「聖書と典礼」などを出版しているオリエンス宗教研究所の初期メンバーになっていた方です。父は神父様との出会いのなかで、親のように慕っていただけあって、自身が家庭をもち、家族の会話の中で今まで出会った司祭の思い出話が、多くありました。だからでしょうか、私が教会であった話の中で、司祭のちょっとした嫌みの話題になると、父に猛烈に怒られました。父が私にしていた信仰教育というのは、それだけかもしれません。私が神学校に入るとき、「司祭はハッピーな人生を送れないぞ」と静かに言いました。その父も、今年で帰天して10年となりました。
 母は戦争の疎開先の学校で出会ったシスターに憧れて、洗礼を受けたということでした。本気でシスターになりたかったのと聞いてみましたが、長い識別の期間を経て、社会の中で働く道を選びました。私の幼少期には、「さみしくなったらロザリオを唱えなさい」と言って、毎年5月になるとロザリオを買って、取り替えてくれました。その母も、現在ちょっと記憶が曖昧になってきました。

 そんな両親をもった私は、生後三カ月で洗礼を受けています。「善いと思ったことはすぐに」という私のパターンは遺伝のようです。その後、普通に近くの公立学校に義務教育時代は通っていました。しかし、不思議なことに、小学校の担任の先生の結婚相手は牧師で、中学の担任の先生はクリスチャンでした。小学校の先生は、卒業時の通信欄に、「こんなにクリスチャンであることを平気で公言できるあなたにびっくりしました。尊敬してます」と書かれていて、怒られっぱなしの小学生生活でしたので、コメントをみて意外に感じました。
 中学の先生は、「馬鹿は神父になれない。だから勉強しろ」が在学中のコメント、「ひとつのことを成そうとするのは素晴らしいこと」というのが卒業時のコメントでした。

 「普通に信じて生きていく」というスローガンを聞くと簡単ですが、難解なことに遭遇すると試練となる内容です。自分の力を信じすぎてバランスを失うし、自分を卑下すると、これもまた不安定になることがあるからです。ある程度の「不偏心(かたよりのないこころ)」が必要です。それができるのは心の自由を持つときです。祈り方も大事になります。
 これだ!というものがあって、洗礼なり修道院や神学校にはいるスタートがあっても、それが自分の人生に効き目をもたらすためには、ゆっくりとした時間とタイミングと相性という意味で、よき計らいが必要です。焦らないことです。

 4月の終わりの日曜日、多摩教会の主日ミサを平神父様に委ね、カリタスジャパンの務めで生まれ故郷の教会である高円寺教会でミサ&講話をしてきました。神学校に入ってから23年のご無沙汰にもかかわらず、その分年を経た教会の皆さんが、「しっかりやっているか? 大丈夫か?」の様相で講話の場にいてくださったとき、自分は見えない神さまの計らいに導かれているなと感じました。そして十年以上の友人関係だった人、40年間親のように指導してくれた方と親戚、また多摩教会の歴史のなかで大切なものを与えてくださった方々への葬儀の祈りをする機会がこの一カ月の間にありました。寂しさと同時に神のなさる素晴らしさをくみ取ることができる祈りの中で、その人生に向けた神さまの計らいの偉大さに驚嘆します。

 召命(しょうめい)という教会専門用語ですが、広い意味ではすべての人に神さまからの使命がある、狭い意味ではその呼びかけに賭けて司祭、修道者になるとあります。英語にあたるvocationには「天職」という説明が辞書にありました。
 多摩教会では、6月16日には、聖堂イコンを制作され、多摩教会とゆかりのあるシスター内海が2年ぶりに来日、多摩教会で講話をしてくださいます。6月30日には、多摩教会の信徒から神学校に入り、司祭となって25年になる猪熊太郎神父様の感謝と講話のチャンスがあります。
 広い人生の大海原で、神さまが導いてくれるということに賭けてみる。それはすべての人に該当します。そして見えない事が多いけれど、あの方が愛をもって見守ってくれている。そんな生き方を目指す我々に対して示唆となる言葉が、このお二人から頂けるかもしれません。

201905-01「排除ZEROキャンペーン」の講演を調布教会で

連載コラム:「チャリティギターコンサートを終えて」

= 弱音・不安は神様に預けて、受け入れあう笑顔をもらいに行こう =
連載コラム「スローガンの実現に向かって」第99回
「チャリティギターコンサートを終えて」

南大沢地区 加藤 泰彦

 夏が来れば思い出す、はるかな尾瀬、遠い空
 皆さんの歌声がひとつになり、聖堂に響き渡りました。

 4月28日午後、今年で第8回目となるチャリティコンサートが幕を閉じました。
 ソウル在住のギタリスト、キム・ソンジンさんを中心にしたギター五重奏団「グランギタークインテット」とヴァイオリニストのキム・スオンさん、このコンサートのために忙しいスケジュールをやりくりして多摩教会までいらしてくださいました。

 2011年5月1日、東日本大震災発生から2カ月もたたないこの日、韓国からこの震災復興のために音楽を通じて協力をしたいという熱意のもと、キム・ソンジンさんのギターコンサートが開かれました。この初回からずっとコーディネーターをしてくださっている、崔承埈(チェ・スンジュン)さんからこの話をいただいたときには、ちょっとびっくりしました。この時期にコンサートを予定していた海外の演奏家たちの多くは、コンサートをキャンセルしていました。それにもかかわらず、コンサートを開いてくれたのです。後で聞いたことですが、周囲からは大反対されたとか。
 ギターコンサートには多摩教会聖堂はうってつけの場所です。ギターの音量に見合った適度な広さと、すばらしい響きを生む高い天井。初めてのコンサートは大きな反響をもって終わりました。それ以降、ほぼ毎年、彼はこの多摩教会に足を運んでくれました。初回は一人の演奏でしたが、その後、ギター二重奏、ヴァイオリンとの二重奏、ギター五重奏、五重奏にヴァイオリンとクラリネットが加わるという内容のバージョンアップがされてきました。次々新たな協力者が集まり、音楽を通しての震災復興支援活動の輪が広がっていきました。

 震災の記憶は年を経るごとにだんだんと人々の記憶から遠のいていくにもかかわらず、この活動を続けてくださったキム・ソンジンさんはじめ皆さんには、心から感謝の拍手を送りたいと思います。今回も来てくださったヴァイオリンのキム・スオンさんは、昨年のコンサートの後で、演奏しながら普通の演奏会では味わうことのできない感動に包まれた、というお話をしてくださいました。大震災で被災された方々、なくなられた方々、復興支援に携わる方々、すべての人々へ思いを馳せ、あの出来事を忘れない、いつまでも記憶にとどめる。その会場の雰囲気が彼女の心を揺さぶったのかもしれません。

 昨年からは、多摩教会混声合唱団「ぶどうの実」との競演も実現しました。音楽を通じての交流も深められました。

 このチャリティコンサートは今回を持って終了することになりました。今年のコンサートでいただいたアンケートでは、存続を求める声が大きかったのですが、コーディネーターを務めてくださった崔さんが、お仕事の都合でしばらく日本を離れられることになったため、とりあえず一区切りをつけることにいたしました。
 今後また新たな機会があれば、ぜひキム・ソンジンさんはじめ皆さんの演奏を聞きたいと思います。夏が来ると思い出す、あのコンサートを!

201905-02キム・ソンジンさんを中心に結成されたギター五重奏団「グランギタークインテット」