2015年9月号 No.505

発行 : 2015年9月19日
【 巻頭言:主任司祭 晴佐久 昌英 】


教会と呼んではいけません

主任司祭 晴佐久 昌英

 9月7日、月曜日の朝にローマに着くと、テレビは前日の教皇フランシスコの「各教会一家族、難民を受け入れてください」という声明のニュースでもちきりでした。
 「多くの人々が、戦争や飢餓から逃れて難民となり、生き残ることを願いつつ旅立っています。こうした悲劇を前にして、福音は、その人たちに具体的な希望を示すようわたしたちを招いています。『がんばって、耐えてください』と言うだけではいけません。したがって、欧州の小教区、修道院、聖地巡礼地にお願いします。福音を具体的な形で示し、それぞれ難民の家族一世帯を受け入れてください」
 現在の欧州の難民事情を見るにつけ、このパパ様はきっとそういうことを言い出すだろうと思っていましたが、もはやこの待ったなしの状況にあって黙っていられない、ということなのでしょう。9月6日の「お告げの祈り」の前に、サンピエトロ広場に集まった大勢の信者に呼びかけたのです。
 声明の最後には、「このもっとも小さい者にしたことは、わたしにしたことなのです」というマタイ福音書のイエスの言葉を引用したうえで、「バチカンも難民二世帯を受け入れます」と表明しました。
 欧州には小教区、修道院合わせて10万以上の共同体があるという報道もありましたが、すべての現場がこの要請に従えば、単純計算しても10万家族が救われるということになります。

 9月9日、水曜日の教皇一般謁見の日には、申請してあった謁見の入場券を前日に手に入れて、早朝からサンピエトロ広場の入り口に並び、一つのブロックの最前列に陣取って教皇様を待ちました。フランシスコ教皇にお会いするのは聖ヨハネ・パウロ2世教皇の列聖式以来、3回目ですが、相変わらずの人気で、広場はいっぱいでした。
 この日の説教は、家庭と共同体に関するもので、6日の声明も意識してでしょう、「福音に真に従う教会は、いつも扉を開いている、もてなしの家のようになるに違いありません」と語りかけ、「閉ざされた教会や小教区、教会組織のことを、教会と呼んではいけません。博物館とでも呼ぶべきです」とまで言い切りました。
 「教会と呼んではいけない」!
 おっしゃるとおりです。ドキッとさせられます。わが多摩教会を、パパ様は教会と呼んでくださるでしょうか。パパ様はこうおっしゃいました。
 「イエスの周りに集う人々は、もてなしの心にあふれひとつの家庭を形作ります。それは閉鎖的なものではありません。そこにはペトロやヨハネがいますが、そのほかにも飢えた人、渇いた人、異邦人、迫害されている人、罪人など、多くの人々がいます。そしてイエスは絶えず皆を受け入れ、語りかけます。神に招かれた人々から成るこの家庭を守るために使徒たちは選ばれたのです」

 難民問題は海の向こうの話ではありません。最近、多摩教会に集う人の中にも、様々な事情で住むところを追われたり、明日食べるものにも困り始めた人が複数います。「福音を具体的な形で示し」、「もてなしの心にあふれた一つの家庭を形作る」ためにも、何か本気で始めるよう、神さまから呼びかけられていることは明らかです。
 つい先日は、ひとつの困窮家庭を救うために、数名の有志の信者たちが具体的な対策を話し合いました。わたしはそれをひそかに「教会家族委員会」と呼んでいるのですが。
 パパ様は、「そんなのは無理です」と言いがちなわたしたちを励まして、「主はわたしたちのために奇跡を起こしてくださいます」とも言ってくださいました。
 「家庭と小教区は、社会生活全体を一つの共同生活にするという奇跡のために働かなければならないのです。家庭の皆さん、小教区の皆さん、聖母マリアの勧めに従い、イエスが言いつけたら、その通りにしましょう。そうすればあらゆる奇跡の源、日常生活における奇跡の源を見出すことができるでしょう」

【 連載コラム 】


連載コラム「スローガンの実現に向かって」第57回
平和への祈りを通じた繋がり

落合・鶴牧・唐木田・町田地区 北村 勝彦

 カトリック教会では8月に平和旬間として平和への実現に向けた祈りの期間があります。
 私は大学生のとき、大学生協で学生委員として活動をしていました。そこでは食を通じた生活安全、環境問題、平和活動への取り組み、学生同士の仲間づくりということで、レクリエーション活動の実施、スキースクール、山梨は特に、地の利を生かしたワインセミナー、山梨では大学でもワインを造っている学部もありましたし、皆さんよくご存じのようにワイナリーもたくさんあります。そういった活動を通じて学生生活をよくするために取り組んでいました。そこで私は、学生に向けた活動を勉強の傍らしていました。オアシスとは少し視点が違うでしょうが、教会から発信する平和への思いという点では少し通じるところもあるのかもしれません。

 その平和活動のひとつに、戦争のない平和な世界を目指して大学生協でも毎年8月に、広島、長崎の平和記念式典に合わせて、「Peace Now!」と題して全国から学生を集めて平和活動についての大学生間の交流、意見交換をしていました。私のいた大学生協では毎年学内の学生が平和への思いを込めて折った千羽鶴を届けるために、学生を派遣しており、私は3年生のときに、代表として学生の思いを届けてきました。

 現在は、家族のおかげでカトリック多摩教会に足を運ぶようになりましたが、カトリック教会でも平和旬間を通して同じ思いのもと、平和への実現に向けた祈りを捧げていることを知りました。そして今年は戦後70年の節目の年でもありますし、武力によらない「平和への祈り・思い」がますます必要な世の中になっていくのだと思います。今は、このカトリック多摩教会を通して祈りを捧げることでしか、その実現に向けた関わり方はできてないですが、戦争のない平和な世界を次の世代に繋いでいくためにもその思いは強く持ち続けていたいと思います。そして家族が集うオアシスの実現に向かうことが、同時に平和への祈りの力もより大きなものとなり、平和への実現に向けて、また一歩近づくことなのだと思います。
 そして、最後にカトリック多摩教会というオアシスに多くの家族が導かれることを願います。

【 お知らせ 】


「初金家族の会」からのお知らせ

 9月4日の初金ミサで晴佐久神父様は、福音のルカ5.33-39、「新しいぶどう酒は、新しい革袋に」の例えから『新しいことに向き合えば進歩があります』と加計呂麻島で漁業青年がマンゴー栽培に挑戦、勇気を出して新分野に取り組んだ素晴らしさを話されました。
 ミサの間に生後4ヶ月の赤ちゃんの祝福があり、可愛い幼子の笑顔に心がなごみました。

 続く初金家族の会では稲城地区の竹内博年さんが南米ブラジル在勤7年間の貴重な体験談を披露。様々な異文化に戸惑いながらもカトリック国らしい人情の暖かさに触れたこと、広大な土地で宣教をなさった邦人神父の活動、ブラジルのカトリック教会の歴史全容のほか、現地日系人たちの努力物語や、夫人の異国での子育て奮闘談も紹介されました。

 次回10月2日(金)には、信徒の島田潤一さんが「終戦と想定外の驚き」と題してお話なさる予定です。
 毎月の初金ミサ後、お昼までの1時間の集い、初金家族の会は様々な世代の貴重な人生体験のナマの声が聴けるくつろぎのひとときです。どうぞ皆様、お気軽にご参加ください。