洗礼(受洗者記念文集)

有働 洋平(仮名)

 ある日、蟻は考えた。
 教会へ行こう。教会へ行ってミサにあずかろう。

 で、その日曜日に、バスから、大きな看板の見えるカトリック多摩教会へ行った。乞田川沿いの桜の美しく咲く頃であった。
 蟻が、ゴッタ返す人間が行き交う教会の前に立ったのは、10時ちょっと前。踏みつぶされないように苦心しながら、聖堂にほとんどよじ登るようにして上がって、「聖書と典礼」を受け付けでもらってから、祭壇の左側に座った。さすがに、気がひけて前にドーンと座る勇気がなかったから。

 ミサが始まって聖歌を歌い、神父様のお説教を聴き、聴いている内に頭が混乱してきてよくわからなかったが、神父様が説教壇の上に指を立てて
 「あなたは救われている!」
 「神はあなたを愛している!」
 と、力強く陽気に明るく宣言されたので、メモを取っておいた。

 蟻は後日、蟻なりの道をたどって、洗礼を受ける決意をした。
 どんな道をたどり、どんな思いをおい、どんな苦しみの中を歩かなければならなかったかは、言うまい。
 ただ、蟻は幸福であった。

 蟻は、洗礼式を5日後に控え、ボールペンを持って、洗礼式の後に出す作文の構想を練っている。
 彼は、洗礼式に行き着くであろうか。

 ハレルヤ25人の友、
 ハレルヤ入門コースの皆さん。