アンジェラの千羽鶴
信徒館の売店アンジェラの壁に飾られた千羽鶴をご存じでしょうか?
とても小さな折り紙で折られていて、10色のグラデーションにつなげ、セロファンで包みリボンで飾りつるされています。日本古来の祈りの文化としての折り鶴がこのような形で美しく飾られているのを見て、どなたが、どのような祈りを込めて折られたものなのか気になっていました。
戦後70年になります。私は1944年生まれで、出生時に父は戦地にいました。小学校の担任の先生はシベリアの戦地での苦しさ、つらさをことあるごとに語ってくださいました。高校の担任の先生は戦争未亡人の英語の先生で、米国の雑誌に「夫を返せ」という記事を投稿されていました。
壺井栄の「24の瞳」の映画を見て涙し、主人公の大石先生にあこがれ、戦争のない世界にするために自分にできることは先生になることだと考えて、今に至りました。今年度で70才になり定年です。
これから教師をめざす学生の講座での最後の授業で、上記のことを話しました。そして、アンジェラの千羽鶴をお借りして持っていき、祈りと平和のシンボルであるひとつの形である千羽鶴を一人ひとりに手渡しで見ていただきました。「バトンをお渡ししますよ! これからの世の中を歩むのはあなたたちですよ! うれしいとき、苦しい時つらいとき、祈りを忘れずにね!」という思いを伝えました。教壇を去るさみしさ以上に、全てやり終えたという大きな安堵感がありました。世界平和にはほど遠い昨今ですが、たすきは渡しました。私が天国に召されるときも、きっとこのような気持ちになるのだろうと思いました。
この千羽鶴をお借りしている矢先に、その千羽鶴を作った方のご家族が亡くなられました。私も昨年、家族を不慮な思いで送っていましたので、若い方の旅立ちのつらさがこたえました。そして、あの千羽鶴の願いは亡くなったご家族と同様、心の病で苦しむ方々への祈りであったこともわかりました。そしてその千羽鶴を作った方が、更に小型の千羽鶴をご丁寧なお手紙と共に私と嫁にプレゼントしてくださいました。千羽の鶴を折ることがどんなに大変かわかっているだけに、そのお心に涙しました。
2011年にご縁があって、この多摩教会を選び、洗礼を授かりました。昨年度から地区委員、コルベ会を担当し、初めて司牧評議会に出席しました。この教会を支えるために、これほど多くの方々がさまざまな係りを担当されて、成り立ていることにビックリしました。
教会は学校のようだと思いました。神父様という校長先生、司牧評議会という生徒会、さまざまな部活、バサー、軽食、大掃除等々、活動にかかわりながら、友達もどんどん増えていきました。職場もなくなり、地域社会も希薄です。ひとつの信条のもとに集い、共に歩めるこの教会学校に、入学できて本当によかったと思います。
祈りとは、聖書とは、など、まだまだわかってないことだらけですが、諸先輩の皆さまのご指導を受けながら、進んでいきたいと思っています。いよいよ人生の終焉に向けて、更なるミステリーランドにチャレンジできるワクワク感はいくつになっても心が躍ります。二度の癌を経験し、多くの方々に助けていただき、現在に至りました。そのご恩返しを今与えられたこの場で果たさせていただくことが私にとっての心のオアシスです。