-コンサート CARPE DIEM (カルぺ・ディエム)-
神父様、私はあのとき、病院の小さな聖堂で、神様の衣に触れていたのですね、あの温かさ、あの優しさ、あの安心感、涙がとどめなく流れました。あのときの想いを込めて、音楽を作りたいとずっと願ってきました。ミサ曲の終わり近く、「神の子羊、世の罪を除きたもう主よ」を、最後に静かに静かに歌うフレーズを、今年の復活徹夜祭の朝、書き上げたとき、あ、私はこの曲を書くために生まれてきたんだ、と感じました….。
「音楽の歴史にのせて楽しく旅するコンサート」と題して、2015年6月27日に開催したコンサート“CARPE DIEM”、多摩教会のスタッフの方々のご協力はもとより、多くの皆様の励ましに支えられ、無事に終えることができました。グレゴリオ聖歌から始まり、ルネッサンス、バロック、古典派、ロマン派と時代を追って器楽や合唱の数々の名曲を演奏し、プログラムの最後、今回初演となったミサ曲の最終小節のフェルマータの歌声が消えるまで、長丁場にもかかわらず大勢の方が耳を傾けてくださいました。本当にありがとうございました。
正直のところ、ここまでうまくいくとは思っていませんでした。なにもかもうまくいった、いま、振り返ってみると、そんな感想が湧いてきます。梅雨の真っ最中で雨模様を覚悟していたのですが、最後には天気も味方してくれて、前日まで続いていた雨もすっかり止み、約270名という大勢のお客様に足を運んでいただき、1年前にホールを予約したときには想像もしていなかった大盛況のコンサートになりました。コンサートは多摩教会の土曜日のミサの時間帯と重なってしまったのですが、当日のミサでは「後方支援」のお祈りもしてくださっていたとのこと、お祈りの力を目の当たりにしたような気がします。
コンサート会場の若葉台 iプラザホールは、一流の演奏家が好んでCD録音にも利用する素晴らしい響きのホールです。そしてステージ上には気品のある美しい音色を奏でるスタインウェイのコンサートグランドピアノ。ピアニストもソリストも合唱団も、この日のためにそれはそれは一生懸命に練習を積んできましたが、あのホールの響きとピアノの音色が、その練習の成果を、そして音楽に誠実に向き合う演奏者の想いを、見事に後押ししてくれたように思います。ピアノ教室の子供達も音楽の旅に一緒に参加してくれましたが、極上の音響を誇るホールで大観衆を前に、子供達は臆せず演奏し、音楽史の旅の一場面をしっかりと担ってくれました。
このコンサート、当初はまったくの自主公演というつもりでしたが、多摩教会後援にしていただき、多摩教会の信徒が地域の皆様に「音楽会」というかたちでおもてなしをしている、そういう雰囲気が会場に満ち溢れていたことが、ご来場くださった多くのお客様の好評を得ることにつながったと思っています。あの晩、ロビーには晴佐久神父様のカードや著作も販売され、ホールはあたかも多摩教会の出張所のようでした。ふだん、教会とは縁のない一般のお客様もけっこう来られていたようで、ステージでの演奏そしてロビーでの心のこもったサービスによって、教会の温もりを、そのような方々も感じていただけたのではないでしょうか。こうしたおもてなしによる福音宣教の一端を担えたことが、なにより幸せです。
終演後、永山駅前のお店の一角を借り切って、演奏者もスタッフもみんな笑顔でお互いの疲れを癒やし合いました。
その宴の席でも、忘れられない出来事がありました。合唱団のメンバーに、来年の春、洗礼を受けることになっている方がいらっしゃるのですが、その方を力づけるための祈りをこめて、「復活の続唱」の混声合唱を全員で歌ったのですよ、なんと飲み屋の一角で。教会の仲間達の温かい歌声に包み込まれて、その方の目から涙が溢れていました。神様の衣に触れたのですね。