巻頭言:主任司祭 豊島 治「むかいます」

むかいます

主任司祭 豊島 治

 梅雨明けの宣言があってから、暑くなりました。この連休は気象庁も注意をよびかけるほど気温が高いことが報道されています。毎年「異常気象」として天気予報を聞いていますが、慣れてしまって、異常と聞いても緊急性を感じなくなってしまうことがあるかもしれません。水分補給・気温確認しましょう。異常は異状に至ります。

 西日本を中心とした豪雨のあった金曜日、私はカリタスジャパンの役目として広尾にいました。そこで、「大雨特別警報」が、兵庫、広島、岡山、鳥取、福岡、佐賀、長崎、京都、岐阜に出されたことを知りました。この「大雨特別警報」は、50年に一度のレベルの降水量が予想されるときに出されるものですから、こんなに多くの地域にまたがっているのは記憶にないと思いました。タブレットを取り出し、雨雲情報を見ながら様子を見ていました。自治体も避難勧告・指示を出しましたが、被害は甚大なものとなりました。
 今回土砂くずれによって孤立化した地域に、私は以前行ったことがあります。住民の方のひとりはこの土地は脆弱であることはわかっている。しかし現に造成され、売り出された近くには高速道路、そして安い。ここしかなかったのだと話してくださいました。

 報道される光景や内容に動揺してしまい、あわてて自分の行動内容を決める前に、教皇さまの回勅『ラウダート・シ -ともに暮らす家を大切に-』を一読してはいかがでしょう。
 私の心に響いた箇所は13項でした(引用文中の『』は私が挿入しました)

(13) 「皆がともに暮らす家を保護するという切迫した課題は、人類家族全体を一つにし、持続可能で全人的(インテグラル)な発展を追求する関心を含意しています。というのは、物事は変わりうると、わたしたちは知っているからです。創造主は決してわたしたちをお見捨てになりません。神は決してご自身の愛する計画を放棄したり、わたしたちをお造りになったことを後悔したりなさいません。人類はまだ、皆がともに暮らす家を建設するために一緒に働く能力をもっています。わたしはここで、わたしたちが共住する家をしっかりと守るために無数のしかたで奮闘しているすべての人をたたえ、励まし、感謝したく思います。『環境悪化が世界のもっとも貧しい人々の生活にもたらす悲惨な結果』の解決策を精力的に探る人々は、格別の謝意に値します。若者たちは変化を求めます。環境危機と排除された人々の苦しみとを考えずに、いったいだれがよりよい未来を建設していると主張することができるのか(後略)」(1)

 地球の気候変動、温暖化に真剣に向き合わないと、自然災害は大きくなるばかりだと思います。今、現場で向き合い乗り越えていこうとしている人たちを、まず祈りで支えましょう。カトリック中央協議会のHPに東日本大震災被災者のための祈りがあります。東日本大震災の被災者に向けて祈ったのち、ご自身で言葉を替えて、西日本各地の被災者のために祈ることができると思います。

あわれみ深い神さま、
あなたはどんな時にも私たちから離れることなく、
喜びや悲しみを共にして下さいます。
今回の大震災によって苦しむ人々のために
あなたの助けと励ましを与えて下さい。
私たちもその人たちのために犠牲をささげ、祈り続けます。
そして、一日も早く、安心して暮らせる日が来ますように。
また、この震災で亡くなられたすべての人々が
あなたのもとで安らかに憩うことができますように。
主キリストによって。アーメン。
母であるマリアさま、どうか私たちのためにお祈りください。
アーメン。(2)

 カリタスジャパンは、西日本豪雨被災地のための募金を10日に開始しました。多摩教会では22日までの間、受け付けることにします。直接の送金を検討されている方は、HPで参照ください(3)

 被災地のまわりで起こる窮状を聞いてうなだれるとき、晴佐久神父さまの著書、『恐れるな』の一文も示唆をあたえてくださいます。

「私たちはすでに『私はある』という方、イエス・キリストという印籠を持っています。一日生きていれば10や20の悪に出あいますし、悪は自分の中にも住んでいて、あれこれ悪さをする。私たちを恐れさせ、怯えさせる力として働きます。(中略)
 被災地に来て、こう語るのは勇気のいることです。しかし、私は語る使命があると思っています。まず、『私はある』という方を信じて、この方は善だから私たちは救われる、いやもう救われていると信じなければ、悪という恐れに負けてしまいます。信じることからすべてが始まります。神の創造の業に私たちが寄与するのはそんな瞬間です。信じようと思った瞬間に、とてつもなくすばらしいことが起きます」(4)

 暑さで体力消耗する期間です。身体をいたわりつつ、真実を探求しながら信じる方を向いてこの夏をこえましょう。

 *多摩市のハザードマップによると多摩教会周辺は乞田川があるため最大1メートルの浸水の予想がついています。教会建物はそれよりも上にあります、地下には雨水タンク・自動排水ポンプがあり、作動点検しています。
 また、本文中に紹介した本2種類は、教会売店にあります。
 


(1) 教皇フランシスコ『回勅 ラウダート・シ』瀬本正之・吉川まみ訳(カトリック中央協議会、2016年)13項を参照
(2) 東日本大震災被災者のための祈り」カトリック中央協議会事務局長 前田万葉(2011年4月20日)
(3) 西日本豪雨災害 緊急救援募金、受付を開始しました」カリタスジャパン(2018年7月10日)
(4) 晴佐久昌英『恐れるな』(日本基督教団出版局、2012年)39-40頁を参照