この巻頭言も、晴佐久神父としては最終回ということになりましたので、心置きなく、言いたいことを言わせていただきます。
多摩教会は、日本一の教会です。まあ、「日本一」は言葉のあやにしても、少なくとも、「今の日本で、特別に聖霊の働きを感じられる教会」であることは、間違いありません。実際に多摩教会に出会って福音に触れ、多摩教会に歓待されて救われた人たちは、それを肌で感じているはずです。中でも、それぞれの闇の中から信仰の光へと導かれ、今年の復活祭に洗礼を受ける人たちは、その聖霊の働きの証し人です。
その中には、幼いころキリスト教に出会ってから洗礼を求め続けて来たのに、どうしても救いを見出だせずに、長年にわたって苦しんできた人がいます。
親に嫌われ、学校や職場ではいじめられ、家から一歩も出られずにいた人もいます。
怪我と病気で苦しみ、激しい痛みのせいで生きる希望を失っていた人もいます。
大学生の息子に突然先立たれて、絶望の淵をさまよっていた夫婦もいます。
父親の介護と死をきっかけに、本物の宗教を求め始めた、全盲の男性もいます。
何度も自殺未遂を繰り返しながら、自分の本当の居場所を求めて、様々なところをさまよい歩いてきた女性もいます。
精神科の閉鎖病棟の中で多摩教会の信者と出会い、その信者を見舞いに来た神父に招かれて、教会に通いだした青年もいます。
人生に行き詰って先が見えず、真っ暗な思いで教会を訪ねたのに冷たく対応されて傷つき、やっとの思いで暖かい教会を探し出して来た大学生もいます。
最愛の夫を亡くしたことをきっかけにして、初めて真剣に自分の生き方を模索して訪ねてきた奥様もいます。
つい最近、深刻なガンを宣告されて大きなショックを受け、一日も早く救われたいと願って、必死な思いで受洗を希望してこられたご婦人もいます。
みんな、多摩教会で福音に出会って安心の涙を流し、教会家族に受け入れられてキリストと結ばれ、救いの喜びに目覚めて洗礼の秘跡を願い出た人たちです。
今年が特別だということではありません。毎年、こうして闇から光へと、大勢の人が招き入れられてきました。今年の受洗者は37名です。晴佐久神父在任の7年間で、多摩教会創設以来の洗礼台帳ナンバーは、419番から721番まで、303人分増えました。
すべては、聖霊の働きです。聖霊こそは、恐れと無知の闇の中にいる神の子たちをキリストのもとへ導いて、真理を教えてくれるのです。すなわち、この世界が生きるに値すること、この人生は決して無意味ではないこと、この命は死で終わるものではないこと、この私は天の父に、永遠に愛されていることを。
確かに、世界は苦しみに満ちています。人生は無駄に過ぎていくように思われます。命はあまりに儚く、自分は誰からも見捨てられているように感じることさえあります。病気、障害、虐待、貧困、災害、不和、戦争。この世界を生きるということは、なんと過酷なことでしょう。確かに、この世界は苦難と苦悩に満ち満ちています。
でも、ご安心ください。この世界には、多摩教会があります。福音を語る多摩教会のキリスト者がいます。福音を語る多摩教会のキリスト者たちという、日本一の教会家族があります。
たとえ神父が代わっても、多摩教会に働く聖霊は決して変わりません。
多摩教会の教会家族と共に働いた7年間は、我が司祭生活で、最も恵みに満ちた日々でした。教会家族のみなさんの愛情と忍耐のおかげです。感謝の言葉しかありません。みなさんは、本物の教会家族です。これからも、本当に多くの人を救うことでしょう。
聖霊に導かれてこの文章を読んでいる、まだ福音を知らない方に、申し上げたい。
あなたは、神の子です。神に愛されています。あなたはもう、天の父の親心によって救われています。安心して信頼して、希望をもって、日本一の多摩教会においでください。