巻頭言:主任司祭 豊島 治「意識もちます」

意識もちます

主任司祭 豊島 治

 記録的な猛暑と災害に見まわれた令和最初の夏が終わろうとしています。平日も扉を開け祈りの場となっている多摩教会聖堂ですが、この夏は一時室内温度40度を記録しました。祈りに来られた方の安全のために、風通しをよくする施工を計画することになるほどの状況でした。予報では、これから秋雨前線が活動し始めるとのことですので過ごしやすくなるのでしょう。令和元年も、あと4カ月を残すのみとなりました。2カ月後には待降節、季節は冬です。時の流れに溺れないで、しっかり時の徴(しるし)を感じていきましょう。

 今年9月1日から10月4日(アシジのフランシスコの記念日)において、教皇フランシスコが教皇庁に新しく設けた部署、「人間開発のための部署」(Dicastery for Promoting Integral Human Development)は、「被造物の季節」への参加を呼びかけています。神さまがお造りになられた被造物が共存している家(common home)を想い、祈りましょうという呼びかけととれます。内容の検討&実践については、これから教会の委員会に委ねますので、次号のニューズでの報告となります。

 教皇フランシスコは、「共存している家」という表現で、私たちの生きている地球規模の視点を提唱しています。2015年5月回勅「Laudato si (あなたを称えます)」は、地球温暖化や環境問題に警鐘を鳴らし、「大胆な文化的革命(CNNニュース訳)」の必要性を訴えています。
 日本の場合、頻発する局地的短時間豪雨は、1970年代と比べて2018年は回数にして約20回増であり、降雨量はおよそ2倍に増えています(気象庁アメダス)。21世紀は災害の世紀、主原因は温暖化、すなわち化石燃料の消費と森林の消滅といえます。大気中の1カ月の二酸化炭素平均濃度は、18世紀末は280PPMでしたが、現在は400PPMで、これにより宇宙空間に逃げるべき熱線を吸収し、気温が上昇、温暖化→豪雨、土砂災害や氾濫へと至ることが多くなりました。
 地球上の酸素の三分の一を供給し、「地球の肺」といわれる南米アマゾン森林が延焼し続けているのは、政府の森林伐採の無計画さが原因とされており、現状は過去10年で最悪と報道されています(日経BP)。漢検協会が出した2018年の今年の漢字が「災」であったことから、状況は私たちの共通認識といえます。

 では、私たちは、いかにして、この現実を生きるのか? ゴミ削減やリサイクルが一案です。そして、阪神・淡路大震災のときから啓発されたのは、「災害時の備え(備蓄&行動方法)」の呼びかけです。
 1995年の阪神淡路大震災のとき、発生時刻は1月17日5時46分で、延焼していました。兵庫県庁には当直制度はなく、職員や家族が被災され緊急招集できず、役所の機能はアンコントロール状態にありました。そこから事前の防災対策と災害発生時の応急対応が全国民的な備えとして必要であり、啓発と養成が必要ということになりました。これが2002年の閣議決定、「民でできることは民で」、「法人の活躍」の内容です。東京都は、これに加えて小池都知事から各宗教施設も協力を呼びかけられています(2017年9月21日)。公官庁の経費削減も進んでいるので、避難所を役所の職員無しで互いに設立し、運営し合い、危険を回避する能力を持ち、協力して助け合いながら生きるのだという意識と訓練の呼びかけです。

では、教会として、クリスチャンとしてどうしていくのか?まず、諦めないことです。焦らないことです。そして動転しないこと。どんな状況においても識別を仰ぐことです。自分には「もうこれしかできない」ということは、自分にも「まだこれならできる」という余地が残されている、ということであるはずです。
 そのような前向きの姿勢を保って生きるために、 十字架に心を向けましょう。あの十字架の上で、手足を釘づけにされた私たちの救い主は、もはや何もできないように思えます。「さあ、その十字架から降りてみろ。そうしたら信じてやる。」 人々はこのようにはやし立てたのです。それは私たちの「あきらめの正当化」の象徴です。これは打破しなければなりません。そして打ち砕くことができるのです。なぜなら根拠がしっかりキリストの生涯にあります。
 十字架の死によって、私たちに、そのいのちを与え尽してくださった方を信じるとは、どんなときも「わたしに従いなさい」との十字架の主の呼びかけに従うということです。そのような信仰に立つことができれば、「自分にはもう何もできない、自分にできることはもう何もない」とは言えないはずなのです。

 私は、今年1月に災害対応チームリーダーとして東京大司教から任命を受け、今まで準備をしてきましたが、9月初旬に今後の東京教区の方向性を提案するプレゼンを、大司教様の前で一人ですることになっています。具体的な呼びかけが皆さんにきたときは、「なぜ教会がするの?」ではなく、クリスチャンであるからの強みでいていただきたいとおもいます。9月1日、東京都は防災の日。地域では、防災&災害対応行事が行われています。意識の一端を提供ください。

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201907-1

【 豊島神父が資格講習受講中、鶴巻神父さまが長崎からサポートに来てくださいました。神父さまは、「また2月に来ます」とおっしゃっていましたが、お知り合いの結婚ミサのための上京かたがた、多摩教会にお寄りくださるということです。(8月16日講座の一コマ)】