連載コラム:「心の病で苦しんでいる人のための夏祭り」

「荒野のオアシス教会を目指して」

やさしく、あたたかく、心からのオアシスづくり
連載コラム「スローガンの実現に向かって」第80回
「心の病で苦しんでいる人のための夏祭り」

諏訪・永山地区 佐内 美香

 2012年クリスマス。心の病の人のためにクリスマス会をしようという、晴佐久神父様の提案で、「心の病で苦しんでいる人のためのクリスマス」、通称「ここクリ」が誕生。「年に一回なんて淋しい」という参加者の声に応えて、2014年夏から「心の病で苦しんでいる人のための夏祭り」、「ここナツ」が続いて誕生した。
 今年も「ここナツ」は主日のミサから始まった。そして参加者が書いた七夕飾りの短冊が奉納された。続いてフルートの演奏、正太郎くんのコンサート。どちらも心のこもったパフォーマンスで、その場の雰囲気をなごませたと思う。その後、信徒館に場所を移し、皆で食卓を囲んだ。一つのテーブルに2、3人のスタッフがつき、参加者のお相手をする。初めはポツリ、ポツリの会話でも徐々にうち解けてきて、時折笑い声も聞こえる。熱心に話を聞く人、少し暗い表情の方に語りかけている人、スタッフも慣れないながらも参加者の心に寄り添うことを心がけて接していた。食事はすべて手作り。この日のために皆腕をふるった。今年は国際色豊かなメニューで、タイ、ドイツ、イタリア、エジプトなどバラエティに富んだご馳走となった。食材も信徒の方が、ご自分の畑で作られた野菜を沢山提供してくださった。産地直送だ。楽しいひと時も終わりに近づき、皆で聖歌をいくつか歌った。名残惜しいのか、それでもおしゃべりは続く。最後の方が帰られたのは予定の時間をだいぶ過ぎていた。

 晴佐久神父様の異動後、去年に引き続き、今年も「ここナツ」を提案したが、正直なところ以前のように実行できるのか心配だった。「ここナツ」「ここクリ」に対する多摩教会の熱意も、年々冷めつつあるのではと懸念していた。実際ミーティングの出席者も少なかった。心がくじけそうになり始めたころ、数名の方々が助言してくださったり、準備を手伝ってくださり、当日のメドもついてきた。そして本番、ふたを開けてみるとスタッフ総勢約30名でお客様をお迎えすることができた。さすが多摩教会、いざという時の団結力は凄い! 今までのように、いや、今まで以上に良い集いとなった。

 ルカによる福音書(17:20)に、「神の国は、見える形では来ない。『ここにある』『あそこにある』と言えるものでもない。実に、神の国はあなたがたの間にあるのだ」というイエスの言葉がある。この世には辛いことが多々ある。人は自分が生きるだけで精一杯だ。心の病の人、貧困の中にいる人を顧みる余裕がない。そんな中でキリスト者に求められているのは何か? 微力ながらも、そのような人々に神の国を垣間見せてあげたい。教会はこの世という砂漠の小さなオアシスだ。渇いている人の喉を潤すことができる。
 今年の参加者は約20名。でもこの裏にはもっと沢山の人々がいる。「いつかここナツに行けるようになりたい」「こんな催しがあるんだ」と心の励みになるだけでいい。私たちの知らないところでこの集いが種となり、小さな花をたくさん咲かせてくれることを願っている。