連載コラム:「耳を傾ける」

「荒野のオアシス教会を目指して」

一瞬の勇気で、一生の家族!
連載コラム「スローガンの実現に向かって」第64回
耳を傾ける

南大沢 加藤 泰彦

 復活祭が終わり、そろそろひと月が過ぎようとしているこの時期は、毎年のごとくちょっと忙しくなってきます。復活徹夜祭で洗礼を受けられた方々の記念文集の編集が始まるからです。2010年から作り始め、今年で7冊目になります。『受洗者記念文集』作製は多摩教会広報部の大切な仕事です。
 入門係の文集担当者から毎日のようにメールで新しい原稿が送られてきます。さまざまな年齢、境遇の方々の、洗礼にいたるドラマが書き込まれた原稿が届きます。長文もあれば短くまとめられたもの、散文もあれば、論文風のものも。書き手の個性を反映させた色とりどりの原稿が集まってきます。
 光栄なことに、この沢山の原稿の第一番目の読者の役割をさせていただいています。第一行目を読み始めたときハッとさせられる原稿に出会うこともしばしばです。それもそのはずで、人生の一大転換点を通り抜けられた方々の証言は読み手をグッと立ち止まらせる迫力があります。文章を丹念にたどってゆくと、行間に深い絶望や挫折、恐れが見かくれすることもあります。また、その苦しみを乗り越えた喜び、賛美も語られます。
 これらはまぎれも無い、生きた証言です。わたしたちはそれに素直に耳を傾けたいと思います。
 復活節第6主日(今年は5月1日)は「世界広報の日」にあたります。この日のために教皇メッセージが出されますが、今年は「いつくしみの特別聖年」にもあたり、フランシスコ教皇は「耳を傾ける」ということを強調されます。

 「人間社会を、見知らぬ人々が競い合い、優位に立とうとする場としてではなく、互いに受け入れ合い、扉がいつも開かれている家や家庭として考えるよう私は皆さんにお勧めしたいと思います。そのためには、まず耳を傾けなければなりません。(中略)耳を傾けることは決して容易ではありません。多くの場合、耳をふさいでいるほうがずっと楽です。耳を傾けることは,注目すること、理解しようとすること、他の人の言葉を評価し,尊重し,大切にしようとすることを意味します。(中略)耳を傾けるすべを知ることは,計り知れない恵みです。それはわたしたちが願い求め、実践すべきたまものなのです。」

(第50回「世界広報の日」メッセージより)

 文集の中にさまざまに語られるそれぞれの人生に、そっと耳を傾けましょう。闇から光りへ、新たな命への誕生の声を聞きましょう。新たに私達とともに歩む仲間となられた方々を喜んで受け入れましょう。
 時間をかけてゆっくり読んでいただければ幸いです。筆者の原文には極力手を入れないようにしておりますので、読みづらかったり、一言一言考えながら文章をたどる必要も出てきます。しかしその作業は「計り知れない恵み」なのです。オアシスを必死に探し求めて来られた方々の旅路の同伴者になりましょう。
 受洗者の皆さんからの原稿もあと少しですべて集まりそうで、このペースでいけば5月中にはなんとか完成の予定です。もうしばらくお待ちください。