連載コラム:「事実の陰にこそ『愛の真実』が・・・」

連載コラム「スローガンの実現に向かって」第53回
事実の陰にこそ「愛の真実」が・・・

稲城・川崎地区 志賀 晴児

 ノーベル賞受賞者やオリンピック金メダリストなど、長い地道な努力の積み重ねで人並みすぐれた才能をようやく花開かせ、明るい社会づくりに多大な貢献をされた各界の方々が脚光を浴びています。まことに賞賛に値する快挙です。一方、大多数の市井の無名の一人ひとりがそれぞれの人生で何かを探し求め、たとえ、ささやかであっても社会のために何らかの役割を果たしています。人々が苦労して探し求めて得た事実の陰には、眼には見えず、手にも触れられない「愛の真実」が人知れず、隠れているのではないでしょうか。

 私も仕事で巡り合った様々なことをはじめ、数え上げれば限りがないほど夢中で答えを探し求めました。その結果、具体的な支えと多くの励ましとによって今まで導かれてきました。中でも学生時代に、「自分はなぜこの世に生まれてきたのか、この世の最上、最高の価値とは何だろう?」という疑問に真摯に応えてくださった何人もの素晴らしい師と巡りあった事実こそ、数多い「探しもの人生」での幸せな邂逅でした。リタイア後の日々をどのように充実してこころ穏やかに過ごすか、それが今、私の探し求めているものです。
 よくよく考えてみれば、私がこれまでの人生行路で得てきたのは自分で探し求めて見つけ出し、解決したものではなく、時の移り変わりの中でいつも他から与えられたという事実です。自分自身それなりに望み、努力したつもりでも、一人では何事も決して解決できず、また必ずしも甘い結果ばかりではありませんでした。でも、不思議な力によって支えられ勇気づけられたのです。「それが一番よかったからそのようになったのだ。これこそ私への愛の証し、感謝すべき貴重な贈り物だったに違いない」と、正直ずっと後になってやっと気づいたという次第です。オアシスははるか彼方に存在するものではなく、今現在、この私がオアシスの中にいるのです。

 戦争で非業の最期を遂げた方、重い傷病や様々な人生の難儀に直面して悩んでいる家族、事故や災難でひどい目に遭われた人々の苦しみを思えば、私の悩み痛み悲しみなど些細なもの、どんなに恵まれ平穏に過ごしてこられたことでしょう。これまでに受けた多くの事実の陰に、確かに私への暖かい愛の真実、心のよりどころ、オアシスが潜んでいたように思います。有難いことに肉親や多くの知人、友人たち、名前を知らない世の中の沢山の人々、そして何にもまして普段全く気づかずにいる偉大な力が、いつも私の痛み、苦しみを代わりに受け入れてくださり、不束で粗こつ者の私が幸運を頂いてきたのです。
 実際、老若男女を問わず人間誰でも突然どのような苦しみに遭遇するかは想像もつかず、苦難の真の意味を人智で推し量るのは困難ですが、「詩篇119-71、72」の「こらしめを受けたことが私を幸せに導き、私は掟を学んだ。あなたの教えは素晴らしい、すべての金銀にまさる」とのことばの真意を悟りたいものです。そして、一切を限りなく尊い御者にお任せした先人たちの確固たる信仰が、苦しみ、悲しみの意味するものを恵みと喜びの花束に変えた模範から少しでも智恵を学びとりたいと願わずにはいられません。